麻雀界で一世を風靡した『蒼山三段物語』を作者の方の許可をいただいて、
当サイトの記事として転載させていただきました。
※この物語は実際の人物を元に作ったフィクションです。
蒼山三段物語案山子編
第1話
雀荘の仕事は12時間労働の店が多いがそれを長いと感じないメンバーは多い。
麻雀さえ打っていれば時間が経つのは普通の仕事より短く感じるからだ。
アウトオーバーになって立番中心のかかしメンバーとなった今、1日は長く感じられ、労働基準監督所に何度密告の電話をしようとしたことか。
しかしナカバヤシやコヤマに罪はないのでひたすらみんなの雑用係に徹していた。
朝の仕事はまずは買い物、三平ストアでハヤノやオオタの為にガムやカザマが要求する朝のサービスドリンクなど毎日買い物していてもどんどん必要な物はでてくる。
朝の五勝戦が終わって一息ついたら卓掃やトイレ掃除もある。
これだけ才能ある人間が麻雀打たないで牌を磨くなんて神は許してくれるのだろうか?
第2話
先日恐ろしい体験をした。
その日の早番はコヤマ、ナガノ、俺という監督不在のシフトだった。
その隙をついてハヤノ、はよおじさんと負けてるとキレ気味にクレームをつけてくる客の被害を立番の俺が謝罪するという理不尽な事件が立て続けに起きた。
まず朝はよおじさんが新人のウェイトレスの子が起家マークを回しすぎただけでその子を怒鳴りつけるという事件。
そしてハヤノが新規の客の「通らばリーチ」という発声に対して「これはリーチとして認められるのか?」とキレてメンバーを呼びつけ裁定させるという、彼らが女にもてない理由全てを体現しているような所業を披露した。
彼等の悪業の数々は追って書いていくつもりだが、
問題は早野事件の最中にナガノと俺の戦争が勃発したことだ。
第3話
「通らばリーチはリーチとして認められるのか?」
ハヤノが雀荘クレームの歴史上革命的なセリフをはいた。
俺は「当然認められます」となんの疑問もなくその場の裁定を円滑に終わらせた。
すると奥から顔を出してきたナガノが
「店長がそれは駄目だと言ってましたよ」
と、その場を収めかかろうとしといたおれの裁定を台無しにする余計な一言を挟んできた。
これ見よがしに踊り喜ぶハヤノ。 確認の結果は通らばだけでは駄目、通らばリーチは問題なしだった。
後にナガノに先輩として裁定に口を挟まないでくれと言うと、なんとナガノはゴミ箱を蹴りながらそんな言い方はないだろうと怒りだした。
ナガノのその目はお前は先輩だけど案山子だろと俺を完全に見下していた。
絶対同卓して倒してやろうと思っていたが、案山子に出番はなかった。
第5話
フリー雀荘での一番許せない犯罪は何か?
ちゃん森のプレートバック二回貰いやはよおじさんのもしラス8回、ラス半四回言っての続行などが犯罪スレスレの代表として挙げられる。
だが俺は一番許せない犯罪はマグマ泥棒だと確信している。
朝一、コヤマとツー入りで卓が立った。完璧な和了を二回決めてオーラスはトップ目でも次回のために降りないで和了りきっての完勝。
次のゲームのマグマの噴火を確信していた。
そこに有給消化に命をかけているエバタが10時の5勝戦に遅れ気味の参加で入店して来た。
第6話
「エバタ様のご案内をお願いします」
店長の声がホール内に響いた。
麻雀を知らないエバタは近くて座りやすいコヤマの席に腰をおろした。
俺は心の中でガッツポーズを決めた。
だがその瞬間
「本走はコヤマプロお願いします」
店長の非情な声が耳を突き刺した。
「蒼山さん買い物お願いします」
と案山子の仕事をあたえられた。
買い物から戻りゲームシートを見たらコヤマの3連勝が記入されていた。
客を案内して卓を抜けたコヤマに呼ばれたので、礼でもされるかと思ったら買い物の牛乳が足りないという文句だった。
(マグマ泥棒のくせに)
頭をよぎる言葉を口にはせず、怒りを抑えて唇をかみしめた。
第7話
歌舞伎町一番街には我がQ以外にもグレイトブルー、ゴッド、ポイントなどスピードバトルの店が並んでいる。
Qの魅力はなんといっても二枚の金牌とみんなが大好きな白ポッチだ。
Qの白ポッチはリーチ後はいつでもOK、打点が高い方に必ず取るという決まりがある。
その白ポッチをめぐり先日事件は起きた。
朝一の本走、接戦のラス前親番はないが高め満貫安め3900の早い手を一段目でテンパイ。リーチ棒を投げた。
第8話
リーチ後にすぐドアが開きチンピラのカザマが
「おにぎり!」
と叫びながら入店してきた。
リーチ宣言から4巡経過後、幸運にも白ポッチをツモってきた。
裏ドラは無し普通なら満貫のツモ上がりだ。
しかし次回案内は確定している。
満貫を上がると次局会長を裏切ってリーチに対して降りを選択する事はできない。
俺はとっさに1300.2600と申告をしていた。
この高次元すぎる思考を誰が理解できるだろう。
常人から見れば単なる過少申告馬鹿でしかないのだから。
残りの三人は徹夜で打っているタナカ、オクムラの若手二人とムラタのオッさんだった。
オクムラは俺の上がりの手牌など見ないで落ち着きなく自分の手牌を眺めていた。
タナカは気づいたそぶりを見せたが親なので何も知らない振りをしていた。
ムラタのオッさんはフガフガ何かを呟くだけだった。
第9話
早々と手牌を流そうとしたまさにその瞬間だった。
コヤマが
「ここの店のルールは絶対高めどりなので満貫です」
と、まさに余計な一言を言ってきた。
オーラス満貫を上がったために親のタナカのリーチに泣きながら押していく俺がいた。
あっけなく親のハネマン4枚を放銃して3着に転落。
「3着の席かよ」
と文句を言いながら入卓したカザマはあっさりと5連勝を果たして5勝戦を獲得していた。
ありがとうマグマ打法。ありがとう会長。今月は親に仕送り頼みます。
第10話
26歳にして情けないが、母親に金の無心の電話をした。
すると2日後、
生活費、広島銘菓もみじ饅頭、沢山の食材、使いかけのハンドクリームが大きなダンボールに入って届いた。
秀祐元気にしてますか?寒いですね。
勝負の世界に生きている以上こういう事もあると母はわかってますよ。
鳳凰位になったら倍にして親孝行期待しています。
麻雀プロは手を大切にね、私が使っているハンドクリーム送るね。
家財もどうせないだろうからこれとは別の便で届くようにするからね。
蒼山プロの一番のファンの母より
この手紙を読みながら流れてくる涙を拭うことすら忘れていると、インターホンが元気よく響いた。
第11話
「蒼山さんお荷物です!」
佐川急便の声と玄関に入りきらないほどの荷物。
母さんが言っていた家財だった。
ご苦労さまですと礼を述べると 「ここに判子をお願いします、あと代引き料金が187600円ですね」 と非常な通告がされた。
母からの仕送りはほとんどこれで消えてしまい、 部屋の中には六畳ほどの部屋にはアンバランスな50型のテレビと動き回るルンバだけが残った。
翌日1時間ほどシャドバの素晴らしさをマネージャーに熱弁したのち前借りを頼んだ。
猫のひっぽはルンバと楽しそうに遊んでいる。
今日7つ目のもみじ饅頭を食べて空腹を紛らわせた。
マグマ覚醒編へ続く
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ブログ『蒼山三段物語』で一躍有名になった男。
謎の多き人物。
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