麻雀界で一世を風靡した『蒼山三段物語』を作者の方の許可をいただいて、
当サイトの記事として転載させていただきました。
※この物語は実際の人物を元に作ったフィクションです。
蒼山三段物語マグマ覚醒編
第1話
「確率を超えていく麻雀プロ」
それが俺の指標であり、 でっかい会長の背中から目を離さないで鍛錬していこうと心に誓った。
デジタル雀士は確率を求めるのを麻雀だと思っているはずだ。
俺は麻雀愛好家ではなく、麻雀プロになりたかった。
連盟の諸先輩や他団体でも参考になるプロの方の話は積極的に聞いて牌をぶつけあった。
そのなかで生まれたいくつかの交友を紹介していこう。
第2話
その奇抜なファッションの男は気がついたら待ち合わせのルノワールの席の前にいた。
「はじめまして長村です」
最強位も獲得した元協会プロ、長村大が軽く会釈をしてきた。
簡単な挨拶のあといきなり本題に切り込んだ。
俺は
「デジタルだけで打っていては麻雀プロをやっている意味はないと思うのですが」
と、会長の言葉をそのまま拝借してデジタルのカリスマにぶつけてみた。
元プロであり一線を引いているとはいえ、彼の著書 『真デジタル』はかつて、多くのデジタル雀士のバイブルであったのはまぎれもない事実だ。
その男のまえでデジタル雀士を真っ向から否定した。
ピリッとした緊張感が走った。
第3話
長村はタバコをふかすとこう切り出した。
「蒼山さんでしたっけ?僕がなぜ麻雀プロを辞めたのか知ってますか?」
麻雀プロがプロを辞める理由はどうせ勝てない、食えないからだと思ったが、一応 「存じ上げません』 と答えた。
「僕が辞めた理由はデジタルではどうしても証明できない壁にぶつかったからなんですよ」
と長村。
俺はこの後に長村の口からマグマの話がでるのではないかと思い、唾を飲み込んだ。
第4話
「蒼山君も麻雀打ってて不思議に思ったことはないですか?デブが異常に引きが強いという事を。」
長村からでた言葉は大麻常習者としか思えない衝撃的な一言だった。
俺は長村が吸っているロングピースの中身を確認したくなった。
長村はこの後も自分が三面待ちのリーチでデブのドラ単騎や、シャンポンに負けた話を繰り返した。
デジタル雀士の成れの果てを確認した俺はその足でストリート麻雀の雄、アンザイに会いにいった。
第5話
「おまたせ」 新宿アルタ前でアンザイの肩を叩いた。
「夜は麻雀あるんで軽く飯でもいこうか?」 とアンザイ。
二人で歌舞伎町の『とんかつにいむら』の二階席に腰をおろした。
「アンザイさん、麻雀プロとプロでない君との違いはなんだと思う?」
俺は直球を投げ込んだ。
「なんだろね、俺はそこらの中途半端なプロよりも麻雀の中で生きてるつもりだよ。人生の中で麻雀に没頭しているわけじゃない、麻雀の中で人生を送ってる。この意味わかるかな?蒼山君」
俺は
(ああわかるよそれは天牌で主人公が言われてたセリフをパクっただけだろ)
と思ったがそこには触れず千葉の沖本瞬の話を続けて聞いていた。
第6話
アンザイは続いて
「俺は今のままの業界なら永遠にプロにはならないだろうね。なんの魅力も感じないから」
と俺を挑発する言葉を続けた。
「この間のおたくの会長のリーチの動画とかスゲーダサイと思う。その会長を擁護する蒼山君もダサイよ。
でもプロであること自体がダサイとは思わない。
そこが本当にそうなのかどうかは置いておくとして、麻雀に情熱を注げる環境に身を置きたいという気持ちはよくわかる。
今の麻雀プロは麻雀の内容で結果を出すと同時に麻雀界に対しても結果を出さないと本当の意味で上にはいけない。
俺は金という結果だけを出せばいい気楽な稼業だから。
だから本当に業界の中で結果を出そうともがき苦しんでいるプロから見たら、
もしかしたら気楽な立場からプロに対してTwitterで好きに意見している俺の方がダサイかもしれないね。」
アンザイはやけにダサイという言葉を連呼していたが、
その日の彼のファッションは下に着ているタートルネックのヒートテックをニットの袖をあえて捲くって重ね着アピールを演出しており、もしかしたらではなく普通にダサかった。
第7話
「遠慮しないでくださいね。」
優しい奥さんの声。
翌日は連盟の先輩タッキーことタキザワプロのお宅にお邪魔して鍋をつついていた。
「急で申し訳ないのですが話があるんです」
とラインをしたら明日でも家に飲みに来いよとすぐにタッキーから連絡が来た。
「蒼山どうせ悩みがあるんだろ?悩みがあるならまずは飲まないとな 」
と新潟出身の彼らしく日本酒を勧めてきた。
旨い酒と料理、可愛い子供、後輩思いの先輩。
つかの間の楽しい時間を過ごしながら、土産としてコンビニで買った二個のじゃがりこを三つにしておくべきだったと後悔した。
第8話
「で悩みっていうのはなんなんだよ?」
酒がちょうど回ってきた頃タキザワは切り出した。
奥さんは子供の寝かしつけのために寝室にいるためこの空間には日本酒と二人の雀士しかいない。
「タキザワさん、麻雀に流れはあるんでしょうか?先日会長にデジタルに打っていては麻雀プロになれないて教えて頂いて頭からこれが離れないんです。」
悩みをストレートにぶつけた。
さすが新潟出身だけあって顔だけでは酔っているかどうかもわからないタキザワはコップに残った冷酒を飲み干すと語り始めた。
第9話
「そんな事は誰もわからないし、証明できるわけないよ。ただ一つ確かなことは、俺は会長を信じている。
会長があると信じているから、俺も信じている。
これは蒼山君の求める答えになっているかな?
これから俺よりも顔が良くて、麻雀が強い人が出現する可能性はあるけど、会長のような方は絶対に現れないと断言できるよ。
会長は連盟、いや全ての麻雀プロの創造主であると信じている。」
俺よりも顔が、のくだりを聞いてはっきりこいつは単なる酔っ払いであると確信したが、会長を信じて麻雀道を歩んでいくと熱い握手をかわした。
進化編へ続く
この記事を書いた人

-
ブログ『蒼山三段物語』で一躍有名になった男。
謎の多き人物。
最新の投稿
- 2019.03.31麻雀小説【麻雀小説】夜の巨人 金牌を切る男
- 2019.03.31麻雀小説【麻雀小説】夜の巨人
- 2019.03.31麻雀小説【麻雀小説】蒼山三段物語 進化編
- 2019.03.31麻雀小説【麻雀小説】蒼山三段物語 マグマ覚醒編